どんな時も、あなたと一緒なら。
きっともう、寒さにも、孤独にも震える事はない。
≪ずっと、いっしょ。≫
「う〜…寒い〜…」
この寒空に、コートも羽織らずに来たのは失敗だったか。
襟元から冷たい風が容赦無く吹き込み、思わず寒さに身体を震わせた。
でも、なんとなく逢いたくなったから。
ただそれだけの理由で行動してしまう自分が、バカらしい気もしたけど。
それもいいかな、と最近は思うようになった。
ほんの少し誇らしげな気持ちで、空を見上げる。
夜空には、綺麗な星が煌いていた。
「都筑さん?」
病院の前にしゃがみ込んでいると、邑輝の驚いたような声が上から降って来た。
「えへへ…ごめんね、来ちゃった」
迷惑?と上目遣いに訊ねると、やれやれ、と小さく呟き。
「いえ、とても嬉しいですよ」
そう答えた邑輝は、子供のように無邪気な微笑みを浮かべていた。
「それにしても…よく待っていられましたねぇ。結構寒かったでしょう?」
「うん、すっごく寒かった」
苦笑いで答えたあと、ちらりと邑輝を見て、もう一度視線を逸らして。
「でも、逢いたかったから」
ぽつりと、呟いた。
瞬間、邑輝が少し驚いていた。
そして少しだけ考えたあと、では、と艶やかに微笑み。
「寒空の下愛しい人を待たせたお詫びに、私が温めて差し上げましょう」
気取った口調でそう言うと、自分のコートを都筑に羽織らせ。
そっと、手を繋いだ。
「……あ…」
ただ、手を繋いだだけなのに。
しっかりと握ってくれている冷たい手が、彼の体温が。
寒さも孤独も、消し去ってくれた。
「…あったかい…」
「でしょう?」
「…独りじゃないね…」
「ええ…ずっと一緒、ですよ」
どんな時も、あなたと一緒なら。
きっともう、寒さにも、孤独にも震える事はない。
隣を見ると、愛しい人。
その手は、しっかりと繋がっていて。
もう、独りではないのだから。
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