お前を、救いたい。
赦せなくても、憎んでいても。
まるで自分自身のように哀しくて、愛しかった。
その感情が禁忌と知っていても、封じる事は出来なかった。
≪亡骸を≫
完全に体温を失った身体を、抱き締める。
どんなに自分の体温を与えようとしても、相手がそれを受け止める事は無いのに。
「……邑輝…ッ…」
悲しみも苦痛も、消えない。
涙も、止まらない。
「お前は…ッ……最期まで、嘘を吐くのか…っ…」
俺の罪は、きっと何一つお前に伝えられなかったこと。
心に刻まれたお前の存在は、きっと罰。
「……っ…、どうして…ありがとうなんて、言うんだ…ッ…!」
俺は、お前に何もしてやれなかった。
皆を裏切る勇気も無くて、居場所を失いたくなくて、もう独りになりたくなくて。
ただ自分に嘘を吐き続けた、臆病で、卑怯な奴だ。
お前の、罪も。
「俺が……全て赦すから…」
俺が赦したからって、何も解決なんかしないのは解ってる。
でも。
「お前の罰は……俺が、全て受けるから………」
不可能な事だって、解ってるけど。
でも。
「今度こそ……お前を、救うから…ッ……」
じわりと滲んできた涙を、必死に拭う。
邑輝が、そうしてくれた様に。
お前が涙を望まないなら、俺はもう泣かないから。
お前が望むなら、俺は笑ってみせるから。
だから、どうか。
「……死ぬなよ、邑輝…ッ…!!」
だから、どうか、逝かないで。
「俺を…っ……独りに、しないでよ……ッ…」
お前が居ないと、涙も止まらない。
どうか、もう一度。
優しい指先で頬を撫でて、魔法を掛ける様に、泣かないで、と。
どうか、優しい笑顔で、優しい声で囁いて。
そして、今度こそ、俺に。
「…、愛してる、って……言わせて、くれよ……ッ」
ずっと、言いたかった言葉、伝えたかった想い。
もう二度と後悔したくなくて、同じ想いなんてしたくなくて、死神にまでなったのに。
こんなの、変わらない。
永遠に変わる事など無い、苦痛と悲しみの螺旋。
掠れて色褪せた記憶の中で一欠けら鮮明になるのは、幸せだった頃より。
失った後の、灰色の世界なのに。
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