これからも、ずっと傍にいてくれる?
≪トラブルパニック症候群 4≫
「……う……ぅん……」
なんだか、やけに体が重い。
腰の辺りがどっしり重くて、おまけに物凄く眠い。
指先までシーツに吸い付いているように、腕も上がらない。
開けるのを拒否しているような瞼をこじ開け、俺は思考を巡らせた。
確かあのまま、ソファーで眠っちまった筈だよな。
でもここはいつもの寝室…俺の体で力も無い筈なのに、邑輝が運んでくれたのかな。
申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、だるい体をなんとか横に向けた。
あれ?
「え………えっと、誰、ですか…?」
「…私の事を忘れてしまったんですか…? 酷い人ですね、お仕置きが必要かな」
昨日の朝と、同じ科白。
でもそれを言ったのは、邑輝の姿と声。
「……戻った…のか……?」
「…さっきから可笑しな人ですねぇ……何か悪いものでも食べましたか?
ああ、それとも……昨夜は少し苛め過ぎましたか?」
邑輝は何も覚えてないのか?
それとも、もしかして。
「……夢………だったのかなぁ…」
「………? 一体どんな夢を?」
「それは……秘密、だよ」
本当に、変な夢。
でも、中々いい夢だったかもしれない。
「意地悪ですねぇ」
「たまには、いいだろ。 …なぁ、邑輝」
「なんですか?」
「俺も、お前の事が好きだよ」
言われた途端、邑輝の顔が少し赤くなっていた。
赤面した自分の顔なんて気持ち悪いとか言ってたくせに、お前だって赤くなったりするんじゃないか。
「あー、腹へった! さて、朝飯、朝飯っ」
「……都筑さん」
足早に寝室を出ようとした俺の体を、邑輝の腕が軽く引き止める。
額に手を当て体を寄せられて、背中に邑輝の胸板が当たった。
頬に心地良い銀色の髪が当たったかと思うと、そっと言葉が紡がれた。
一瞬で離れてしまった邑輝は、すたすたと寝室を出てしまった。
背中を向けていたけれど、ちらりと見えた耳は赤く染まっていて。
きっと今、誰にも見せた事の無いような真っ赤な顔をしてるんだろう。
「………いつか、話してやるよ」
「何か言いました?」
「いーや、なぁーんにもっ」
いつか、この馬鹿げた夢の話をしてやるから。
その時も、その先も、傍にいてくれるよな?
「……貴方の気持ちを知る事が出来て、良かった」
「何か言った?」
「いえ、何も」
呟いた邑輝の言葉は聞こえなかったけど、何も、と答えた邑輝は優しく微笑んでいた。
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